【モバマス】渋谷凛「プロデューサー、ちゃんと見ててよね」
この人、身長が高いのもあって、歩幅もかなり広い。
きっと、かなり意識してると思う。
そうでなきゃ、こうやって並んで歩くのは、難しいんじゃないかな。
「……」
反対に、私は少しだけ早足で歩く。
歩くのが遅いとは思わないけど……でも、早足で。
今日のステージ衣装のブーツが、カツカツと音を立てる。
傍から見れば、颯爽と歩いてるように見えるのかな。
「――ねえ、プロデューサー」
真横を歩くプロデューサーの顔を見上げながら、声をかけた。
話しかけられると思ってなかったのか、少しだけ眉が上がったのが見えた。
初めの頃は、無表情で、何を考えてるかわからなかった。
でも、最近は、そういう些細な変化にも気づけるようになった……かな。
「はい」
プロデューサーの、落ち着いた低い声。
声は届くけど……私達の距離は、とても遠い。